共有

第50話  

作者: リンフェイ
結城理仁は冷たく言い放った。

 神崎姫華は神崎グループ会長の掌中の珠で、また社長である神崎玲凰の実の妹だ。神崎家の中で深い愛情で甘やかされて育った東京で最も高貴なご令嬢だ。

 「結城理仁、ちょっと待ってて」

 神崎姫華は何かを思い出したかのように、後ろを振り向いて彼女の車まで戻り、車から鮮やかな薔薇の花束を両手で抱えておろした。

 彼女はその大きな薔薇の花束を抱えて車までやってくると、それを車の中に押し込んで言った。「理仁、あなたにあげるわ。あなたとお兄様は仲が悪いけど、私はあなたを愛しているの。私思ったの。あなたに告白して本当に愛してるって伝えなきゃって」

 神崎グループと結城グループは決して犬猿の仲とは言えないが、業種によってはお互い関わりがあった。昔から同業者は仇敵だと言われているが、両家の事業は商売において確かに競争しており、関係はそこまで良いとは言えないのだ。

 神崎玲凰の実の妹である神崎姫華は何年も前に行われたパーティで結城理仁に一目惚れしたのだ。両家は商売上ぶつかり合いがあることから、彼女の兄だけでなく、彼女をずっと可愛がってきた両親も彼女が結城理仁を追いかけることに反対していた。

 神崎姫華は甘やかされて育てられたが、決してバカな人間ではなかった。結城理仁を諦めようとしたこともあるが、長年彼を追いかけていたので忘れることができず、好きな気持ちは増すばかりだったのだ。

 彼女は特に結城理仁のあの冷たい雰囲気がたまらなく好きだった。とても格好良く見えるのだ。結城理仁は若い女性が彼に近づくのを嫌っており、神崎姫華の支配欲を掻き立ててしまった。家族がなんと言おうとも結城理仁のことが忘れられず、大胆にも告白することにしたのだった。

 今日から神崎姫華は堂々と結城理仁を追いかけることにした!

 結城理仁の顔は一瞬にして闇よりも暗くなった。

 彼は片手でその花束を受け取ると再び外へ放り投げた。とても遠くに。

 そして車の窓を閉めると、運転手に冷たい声で指示を出した「出せ!」

 「理仁、理仁、あなたを愛しているの。私あきらめないからね!」

 神崎姫華は車の窓を叩きながら、大きな声で叫んでいた。

 結城理仁の運転手は車のエンジンをかけながら尋ねた。「若旦那様、神崎お嬢様の車は?」

 「突っ込め!」

 運転手はアクセルを踏んで車にぶつかる
ロックされたチャプター
GoodNovel で続きを読む
コードをスキャンしてアプリをダウンロード

関連チャプター

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第51話

    「今日起きた事は内海唯花には秘密にしておけ」結城理仁は周りの者たちに注意した。ボディーガードたちは皆それに応えた。若旦那はもう所帯持ちの人なのだ。神崎家のお嬢様がひと目も憚らず堂々と彼に告白をしたなんていう事はもちろん女主人に知られてはいけないのだ。神崎姫華の告白を、結城グループで働く多くの人が知ってしまった。結城理仁がオフィスビルへ入る時、従業員たちは皆、思わず彼を何度も見た。しかし、彼はいつもと同じく氷のように冷たい表情で唇をきつく結び、ボディーガードたちに囲まれて、大きな歩幅で流星の如く入ってきた。こんなに格好よく、まるで王者のように来臨する男性であれば、簡単に若い女性の心を奪ってしまうだろう。会社の中にもたくさんの若い女性従業員が、無意識のうちに結城社長の本性を知り、彼を恋い慕う気持ちをへし折られた。もちろん誰も結城社長に告白する勇気など持っている人はいなかった。更に言えば結城社長を追うような運試しをする女性などいなかった。結城家というハードルは一般人からすれば高すぎるのだ。結城家の男たちが全員一途であることを知っていても、問題は自分が結城家の男から真心を得られるかどうかだ。自分のオフィスに戻ると、結城理仁は携帯を取り出し、神崎玲凰に電話をかけた。しばらくしてから神崎玲凰はようやく彼の電話に出た。「あれ、今日太陽がまさか西から昇ってきたんじゃないだろうな?結城社長が俺に電話をかけてくるなんて。何か面倒を見てもらいたいことでも?」神崎玲凰はいやらしく薄笑いし、電話の中で結城理仁をからかった。「神崎玲凰、お前の妹をしっかりと管理しておけ!」妹の話題になり、神崎玲凰の表情は険しくなり尋ねた。「姫華がどうかしたのか?」彼は妹が結城理仁のせいで、人生を台無しにしてしまうことを知っていた。結城理仁に何年も片思いしていて、最近は結城理仁に告白したいと言っていた。それを思い出し、神崎玲凰は嫌な予感がした。あの傍若無人な妹がまさか本当に結城理仁に告りに行ったんじゃないだろうか?どうして彼女はあんな死人のような顔をした野郎が好きなんだ。「彼女が俺につきまとうんだよ!今も俺の会社の外にいるぞ。お前が来てあいつを連れ帰るか、それとも俺が誰かに命令してあいつを追い払わせようか?」「俺が今すぐあいつの義姉に家まで連れ帰らせ

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第52話

    「結城理仁は彼女の手に負えるような人物ではない。あきらめるようによく言い聞かせてやってくれないか。結城理仁の周りには、家族親戚を除いて、若い女の影は一度も見たことがない。あいつは冷淡で良心を持たない奴なんだ。どう言っても姫華は聞く耳を持たなくて困ってるんだよ」神崎玲凰も妹には全くお手上げだった。「今俺は忙しくて、彼女に構ってる時間がないんだ。姫華のことはおまえに任せたぞ」「わかったわ、仕事に戻ってちょうだい。今から姫華ちゃんを迎えに行ってくる。彼女を連れてお義母さんと一緒にショッピングするわ。お義母さん、最近ちょっと気分が落ち込んでるから」神崎家の奥さんは姑と関係が良好だった。最近姑の元気がないことに気づき、彼女を誘って街をぶらぶらし、買い物したりしていた。もしかしたら姑を元気にさせることができるかもと思ったのだ。神崎玲凰は突然黙った。彼は母親が落ち込んでいいる原因を知っていた。母親の妹が今に至るまで消息不明だからだ。母親がこの一生で最も口にするのは、この実の妹のことだった。神崎夫人は孤児院で育った。彼女が幼い頃、家族は彼女と四歳年下の妹を残してこの世を去ってしまい、姉妹は孤児院に送られた。それから孤児院の子供を養子として引き取りたいというお金持ちの夫婦に出会ったのだ。その夫婦二人は姉妹のうち、妹のほうを気に入った。当時、姉のほうは八歳、妹にいたってはまだ四歳だった。彼女は妹と別れたくなかったが、妹が誰かに引き取られて、孤児院で育つよりもよっぽど良い生活が送れると知っていたので、その夫婦が妹を養子にするのを受け入れたのだった。それから、姉妹二人は記念写真を思い出に撮って、それ以降は離ればなれになってしまった。そしてそのまま数十年の月日が流れた。神崎夫人は大きくなって孤児院を離れた。彼女は聡明で強い人間だった。自分の力だけで商業界のエリートまでのし上るほどに。社長から厚く信頼され重宝され、また社長の長男の心を掴み、最終的に豪族に嫁入りし神崎家の夫人になったのだ。彼女が自立してから、妹を捜すのを一度もあきらめてはいなかった。妹とは数十年も音信不通だ。少し前に、神崎玲凰はやっとのことで叔母に関するわずかな情報を手に入れ、当時叔母を引き取った金持ち夫婦を見つけたのだった。母親はとても喜び、彼と父親は母親に付き添って会いに行った。そ

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第53話  

    神崎姫華は結局兄嫁に連れて行かれた。あの壊れたスポーツカーについては、電話して業者に牽引してもらうしかなかった。 兄嫁が迎えに来た時、神崎姫華は義姉に対してこう言った。「結城理仁が私の車にぶつけて壊したの。ちょうど私に口実を作ってくれたわ。義姉さん、一歩踏み出したからには、やれるだけやってみせる。三年から五年かけて理仁を追わなくちゃ、私気が済まない」 「義姉さん、あなたが一番私を応援してくれてるよね。兄さんもあなたの言うことなら大人しく聞いてくれるし、私に代わって兄さんに取りなしてくれない?私の幸せを追い求める権利を奪わないでって」 神崎姫華は愛し合う兄夫婦のその関係が羨ましかった。当時も義姉が自分から兄を追いかけ一年後ようやく兄を捕まえたのだ。結婚後は立場が逆転し、兄が義姉を溺愛するようになった。 義姉が当時ためらうことなく、真実の愛を追い求めていなかったら、今のこの幸せな生活は手に入れられなかったと何度も彼女に言っていた。 神崎家の女主人は車を運転しながら言った。「姫華ちゃん、私はあなたが幸せを求めることに大賛成よ。でも、あの人は結城理仁。彼の東京での評判を知っているでしょ?貞操観念が強く女性を寄せ付けないことで有名よ。あなた、彼の周りに若い女性がいるのを見たことある?」 「それに、私たち神崎家と結城家は犬猿の仲だわ。あなたのお兄さんと結城理仁は、かたき同士とは言えないけど、でもライバルだわ。お互いに相手が成功するのは気に食わないようなね。こんな関係のライバルだから、私はあなたが結城理仁に利用されるんじゃないかって心配なの。それに、彼にいじめられるんじゃないかって」 「彼が妻をいじめるわけないでしょう?結城家の家風は素晴らしいものだわ。結城家の男は皆妻を溺愛してるって有名じゃない」 神崎姫華は兄夫婦の愛が仲睦まじいのを自分の目で見て、自然と自分も結婚した後、夫から溺愛されるのを期待していた。 東京の上流階級において、結城家の男たちは妻を溺愛することで有名だった。 「どうであれ、あなたのお兄さんもあなたのためを思って言っているのよ。姫華ちゃん、今はこの話題はこれで終わり。お義母さんがエルメスのお店で私たちを待ってるの。まずはお義母さんを連れてぶらぶらして気晴らししましょうよ。妹さんの件で、お義母さんはここ数日とても落ち込んで

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第54話

    金城琉生は笑って言った。「知っています。そのバイクは僕に任せてください。明日唯花さんに、ちゃんと走れるようになったバイクを返しますから」親友の従弟は何年も前からの知り合いだ。内海唯花は金城琉生を信用していたので、こう言った。「じゃあ、お願いしちゃおう」金城琉生は内海唯花の手助けができて本当に嬉しかった。すぐに電話をかけた。誰に電話をしているのかはわからなかった。内海唯花は彼が住所を教えているのだけ聞こえた。それから、二人はその人がバイクを牽引しに来るまで待っていた。......「若旦那様」運転手の目はとても良く、信号の真向かいにいる女性が女主人にそっくりだったので、信号待ちをしている時に、後ろを振り向いて、目を閉じリラックスしていた主人に言った。「若旦那様、あの女性は若奥様にそっくりですよ」それを聞いて結城理仁は目を開け、前方を見た。道端に男女がいた。その男が誰なのかわからなかった。おそらく距離が少し遠すぎたからだろう。女のほうは確かに彼の妻に似ていた。同じ家で少しの間一緒に生活してきたので、結城理仁はだんだん内海唯花の姿に見慣れてきていた。「通りすがる時、すこしゆっくり運転してくれ。彼女かどうか確認しよう」「かしこまりました」結城理仁は携帯を取り出して内海唯花に電話をしようとしたが、少し考えて、そうするのをやめてしまった。すぐに信号が青に変わった。結城理仁の高級車の列がその前を通りかかる時、車はスピードを少し落とした。車の中にいる結城理仁はその女性が彼の妻、内海唯花だと確認することができた。男の方は誰なのか、彼は車が過ぎ去ってからようやく思い出した。金城琉生だ!奴は恋のライバルだ!内海唯花と金城琉生が一緒にいた?偶然に道端で会ったのか?結城理仁は心の中は疑いの気持ちに満たされ、ひと言もしゃべらなかった。もちろん内海唯花に電話などもしなかった。高級車の列は遠くに走り去った。金城琉生はその遠くの高級車の列を見て内海唯花に言った。「さっき通り過ぎた何台かの車のうち、その一台は結城家の御曹司が毎日使ってる専用車なんだ」車の列が通り過ぎてから、彼はやっと思い出した。内海唯花は適当に尋ねた。「どの結城御曹司?」富豪の結城家のお坊ちゃんだよ。結城グループの現社長さ。この前のパーティに

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第55話

    「彼が普通の人だったとしても、私のような普通の庶民なんか相手にしないわよ」 内海唯花にとって、あの富豪結城家の若旦那については、あの夜パーティーで少し噂話する程度が関の山だ。その後はその人のことなんて頭の中から抜けてしまっていた。まさに彼女が言うとおり、結城坊ちゃんがいくら普通でも、彼女のような庶民とは付き合わないだろう。彼女は決して底辺層の人間とは言えないが、上に行けたとしても限度があるのだ。彼女が知り合った一番のお金持ちは親友の牧野明凛を除いて金城琉生だけだった。金城琉生は名家の金持ちのお坊ちゃんと言える。富豪家の御曹司と彼女が住む世界は全く違うのだから、関わりあうことなどなかった。金城琉生は笑って、それには返事しなかった。彼は内海唯花のことを見下したことなど一度もなかった。でもそれは他の金持ちの坊ちゃんが内海唯花を軽蔑しないというわけではない。彼は上流階級というものをよくわかっていた。みんな家柄、身分、地位ばかり見て話してるのだ。大型パーティに参加した時、彼のような金城家の坊ちゃんでさえ、八方美人になり自分からその偉い人たちと交際していた。うまくいけば気に入られ後ろ盾が得られるのだ。「車が来ましたよ」金城琉生が呼んだ車は路肩に駐車し、人が降りてきて二人のほうにやってきた。金城琉生きを坊ちゃんと呼んだ。内海唯花は彼が金城家の運転手を呼んだことに、この時はじめて気がついた。金城家の運転手は誰から借りたのかわからないピックアップトラックで来た。彼と金城琉生は力を合わせて内海唯花の動かなくなった電動バイクをその車の上に載せた。金城琉生は内海唯花に言った。「唯花さん、もう遅いので修理屋は閉まってるでしょ。坂本さんが明日バイクを修理屋に持っていきます。修理が終わったら、店まで届けますね」「ありがとう」内海唯花は心から金城琉生に感謝した。もし彼に偶然会っていなかったら、彼女はきっとこんな夜遅くに電動バイクを押して家に帰らなければならなかっただろう。そうなれば朝までかかるはずだ。金城琉生はニコニコして「僕たちの仲なんですから、お礼なんかいらないです。唯花さん、車に乗ってください。僕が家まで送ります。まだお姉さんのところに住んでいますか?」「ううん、今はトキワ・フラワーガーデンに住んでるの。琉生君、今日

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第56話

    彼を起こす?おばあさんは彼が寝てしまうと、電話でもかけて彼を夢から醒まそうものなら、激怒すると言っていた。内海唯花が時間を見ると、もう夜中過ぎだった。結城理仁は普段、家に帰ってくるのはいつもだいたいこの時間だから、まだ寝ていないだろう。内海唯花はそれで結城理仁にLINE電話をかけた。結城理仁はまだ寝ていなかった。彼はわざと玄関にドアロックをかけたのだ。どうしてこんなことをしたのか、彼自身もわからなかった。内海唯花と金城琉生が一緒にいて、二人がお似合いだったので、とても不愉快だったのだ。あの腹黒女め、ここはあまり良い条件ではないから、さっさと次の相手を探しにいくとは。ばあちゃんはあの女に騙されているんだ。全部含めても、ばあちゃんが内海唯花と知り合って三ヶ月あまり、どれだけ内海唯花のことを理解できるのだ?ばあちゃんが感謝の気持ちだけで、内海唯花をとても信用しただけだ。それなのに、うるさく彼女と結婚しろと......鳴り続ける携帯をただ見るだけで、結城理仁は内海唯花からの電話に出なかった。しばらくかけ続け内海唯花は自分から電話を切った。しかし、一分も経たないうちに彼女はまた電話をかけてきた。連続三回かけてきてから、結城理仁はやっとその電話に出た。「結城さん、寝ていましたか?」「何か用か?」結城理仁は氷のように冷たく彼女に聞き返した。「ドアロックがかかっていて、家に入れません」結城理仁はしばらく沈黙した後、変わらない冷たさに皮肉を込めた口調で「俺は今日君が高級ホテルで一泊してくると思っていたよ」と言った。内海唯花は彼の話しぶりから皮肉を感じ取った。でもわけがわからない。どうして彼女が高級ホテルに行かないといけないのだ?彼は突然ひねくれて、言葉には刺があった。彼女が彼を怒らせたのか?「結城さん、ドアを開けてくれませんか?」内海唯花は怒らず、彼のそのへんてこな態度を気にしなかった。結城理仁は何もしゃべらなかった。夫婦二人はしばらく沈黙を保ち、内海唯花が口を開いた。「結城さんが私に高級ホテルへ行けと言うなら構いません。どうせいつもあなたがくれたキャッシュカードを持っていますからね。じゃ、今からスカイロイヤルホテルに行ってこのカード使わせていただきます」結城理仁「......」「待っ

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第57話  

    「内海唯花、俺たちはもう合意書にサインしたんだ。たった半年待つだけで離婚ができる。それを待ってから次の相手を探せばいいだろ?今から探す必要がどこにあるんだ。今俺たちはまだ法律上夫婦なんだ。今のお前の行為は不倫だぞ」 「俺はお前のことが嫌いだし、お前を愛することもない。だが、男は、普通の男は不倫されるのが嫌なんだよ」 結城理仁は彼女と金城琉生が一緒にいることが嫌なのだ。 彼の様子がおかしいのは、怒っているからだ。離婚前に次の男を探し、不倫することに怒っているのだ。 金城琉生は彼女に片思いをしているんだぞ。 あいつは彼の恋敵なんだ! これは愛の問題ではなく、面子の問題だ。大の男の尊厳の問題だ。 内海唯花はキョロキョロと見回し、何かを探していた。ちょうど良いものがなかったので、彼女は直接手に持っていた鍵と携帯を入れた袋を力いっぱい結城理仁に向かってぶつけた。彼女は空手を習ったことがあるので、人を殴る腕前はかなりのものだった。 結城理仁は彼女がこんなことをするとは思っておらず、完全に油断していて、彼女の袋が完全にヒットした。 袋の中に鍵と携帯が入っていたうえに、彼女は彼の口めがけて殴ってきたので、殴られた後、結城理仁は口元がとても痛んだ。 彼は顔を暗くし内海唯花を睨みつけた。 今まで彼に、こんなことをする度胸があるやつはいなかったんだぞ! 彼を殴った張本人の内海唯花が近づいてきて、腰を曲げて袋を拾った。口調もとても悪かった。「結城さん、そんなでたらめを言うのが好きな口なんて、殴られて当然よ!」 「わけも聞かずに、自分で勝手に解釈して。結城さん、いつもこんなに独りよがりで横暴で、この世で自分だけが正しいとでも思ってるの?」 結城理仁は痛む口を触り、目を見開いて彼女を睨んだ。 「なにそれ?どっちが目が大きいかって?私だってあんたなんかに負けませんけど」  内海唯花は怒ってまたその袋を持って殴りかかった。 結城理仁:......まだ殴る気か! 一体彼女はどこにこんな度胸を隠し持っていたんだ? こ、これは家庭内暴力だ! 「バイクで帰ってきている途中で、どうしてかわかんないけどバイクが動かなくなったのよ。でも、ちょうどいいところに、親友の従弟の金城琉生が通りかかった。彼とはあんたなんかより長い付き合いな

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第58話

    結城理仁の顔はこわばっていたが、耳は少し赤くなっていた。彼が内海唯花を誤解していたから赤くなったのだ。決して恥ずかしいからではない。彼、結城理仁が恥ずかしがるわけなどないだろう!「これは男の尊厳の問題だ!」内海唯花は鼻で笑った。この瞬間、結城理仁の顔は真っ赤になった。「俺は君なんか好きじゃないし、愛してもいないんだ、ヤキモチなんか焼くわけないだろ?君が不倫さえしない限り、どこの誰と一緒にいようがどうだっていい」「いちいち何度も私を好きじゃない、愛してないって強調しないでよ。まるで私があんたのことが大好きで愛して仕方ないみたいじゃない。私たちは結婚して、ただシャアハウスの生活をしているだけでしょ。正直に言うけど、私はね、ただ姉に私のことで義兄と喧嘩してほしくなくて、急いで姉の家を出てきたかっただけ。住むところを提供してくれるから、あなたのおばあさんの申し出を受け入れてあなたと結婚したのよ」「たくらみがあるって言うなら、これこそがあなたへのたくらみよ。あなたに家があって、私はタダで住まわせてもらえる。家賃が浮いたし、姉さんを安心させてあげられるから」結城理仁「......」彼の持ち家は彼自身よりも魅力的なのだ。彼の口からはスラスラと彼女が嫌いで、愛してないと出てきた。でも、彼女の口から彼が嫌いで愛してないと聞くと、その言葉が耳に刺さった。「私も不倫なんてしないわよ。あなたがさっき言ったとおり、半年後離婚してあなたが本当に家と車を譲ると言うなら、私はこの家に住んであの車を使うわ。そして正々堂々と新しい男を探しに行くから、これじゃダメなの?なんでわざわざあなたに不倫してるなんて言われなきゃならないのよ」結城理仁「......」しばらく経って、彼は態度を柔らかくし内海唯花に謝罪した。「内海唯花、申し訳ない。俺が君を誤解していた」彼の言い分は筋が通っておらず、彼女には敵わないのだ。ただ頭を下げて謝るしかなかった。「今後なにか問題があれば、直接私に言って。さっきみたいに内側から鍵をかけて私を外に放っぽり出すような真似はしないで。あなたのその性格はね、将来奥さんをもらっても、仲違いしやすいわ。もし奥さんもあなたと同じような性格だったら、あなたたち夫婦はすぐ冷戦に突入して、最終的には離婚するわよ」結城理仁は黙ってから

最新チャプター

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第318話

    内海唯花がご飯を食べる速度はとても速く、以前はいつも唯花が先に食べ終わって、すぐに唯月に代わって陽にご飯を食べさせ、彼女が食べられるようにしてくれていた。義母のほうの家族はそれぞれ自分が食べることばかりで、お腹いっぱいになったら、全く彼女のことを気にしたりしなかった。まるで彼女はお腹が空かないと思っているような態度だ。「母さん、エビ食べて」佐々木俊介は母親にエビを数匹皿に入れると、次は姉を呼んだ。「姉さん、たくさん食べて、姉さんが好きなものだろ」佐々木英子はカニを食べながら言った。「今日のカニは身がないのよ。小さすぎて食べるところがないわ。ただカニの味を味わうだけね」唯月に対する嫌味は明らかだった。佐々木俊介は少し黙ってから言った。「次はホテルに食事に連れて行くよ」「ホテルのご飯は高すぎるでしょ。あなただってお金を稼ぐのは楽じゃないんだし。次はお金を私に送金してちょうだい。お姉ちゃんが買って来て唯月に作らせるから」佐々木英子は弟のためを思って言っている様子を見せた。「それでもいいよ」佐々木俊介は唯月に少しだけ労働費を渡せばいいと思った。今後は海鮮を買うなら、姉に送金して買ってきてもらおう。もちろん、姉が買いに行くなら、彼が送金する金額はもっと多い。姉は海鮮料理が好きだ。毎度家に来るたび、毎食は海鮮料理が食べたいと言う。魚介類は高いから、姉が買いに行くというなら、六千円では足りるわけがない。佐々木家の母と子供たち三人は美味しそうにご飯を食べていた。エビとカニが小さいとはいえ、唯月の料理の腕はかなりのものだ。実際、姉妹二人は料理上手で、作る料理はどれも逸品だった。すぐに母子三人は食べ終わってしまった。海鮮料理二皿もきれいに平らげてしまい、エビ半分ですら唯月には残していなかった。佐々木母は箸を置いた後、満足そうにティッシュで口元を拭き、突然声を出した。「私たちおかず全部食べちゃって、唯月は何を食べるのよ?」すぐに唯月のほうを向いて言った。「唯月、私たちったらうっかりおかずを全部食べちゃったのよ。あなた後で目玉焼きでも作って食べてちょうだい」佐々木唯月は顔も上げずに慣れたように「わかりました」と答えた。佐々木陽も腹八分目でお腹がいっぱいになった。これ以上食べさせても、彼は口を開けてはくれない。佐々木

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第317話

    佐々木俊介は彼女を睨んで、詰問を始めた。「俺はお前に一万送金しなかったか?」それを聞いて、佐々木英子はすぐに立ち上がり、急ぎ足でやって来て弟の話に続けて言った。「唯月、あんた俊介のお金を騙し取ったのね。私には俊介が六千円しかくれなかったから、大きなエビとカニが買えなかったって言ったじゃないの」佐々木唯月は顔も上げずに、引き続き息子にご飯を食べさせていた。そして感情を込めずに佐々木俊介に注意した。「あなたに言ったでしょ、来たのはあなたの母親と姉でそもそもあんたがお金を出して食材を買うべきだって。私が彼女たちにご飯を作ってあげるなら、給料として四千円もらうとも言ったはずよ。あんた達に貸しなんか作ってないのに、タダであんた達にご飯作って食べさせなきゃならないなんて。私にとっては全くメリットはないのに、あんた達に責められて罵られるなんてありえないわ」以前なら、彼女はこのように苦労しても何も文句は言わなかっただろう?佐々木俊介はまた言葉に詰まった。佐々木英子は弟の顔色を見て、佐々木唯月が言った話は本当のことだとわかった。そして彼女は腹を立ててソファに戻り腰掛けた。そして腹立たしい様子で佐々木唯月を責め始めた。「唯月、あんたと俊介は夫婦よ。夫婦なのにそんなに細かく分けて何がしたいのよ?それに私とお母さんはあんたの義母家族よ。あんたは私たち佐々木家に嫁に来た家族なんだよ。あんたに料理を作らせたからって、俊介に給料まで要求するのか?こんなことするってんなら、俊介に外食に連れてってもらったほうがマシじゃないか。もっと良いものが食べられるしさ」佐々木唯月は顔を上げて夫と義姉をちらりと見ると、また息子にご飯を食べさせるのに専念した。「割り勘でしょ。それぞれでやればいいのよ。そうすればお互いに貸し借りなしなんだから」佐々木家の面々「……」彼らが佐々木俊介に割り勘制にするように言ったのはお金の話であって、家事は含まれていなかったのだ。しかし、佐々木唯月は徹底的に割り勘を行うので、彼らも何も言えなくなった。なんといっても割り勘の話を持ち出してきたのは佐々木俊介のほうなのだから。「もちろん、あなた達が私に給料を渡したくないっていうのなら、ここに来た時には俊介に頼んでホテルで食事すればいいわ。私もそのほうが気楽で自由だし」彼女も今はこの気分を

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第316話

    しかも一箱分のおもちゃではなかった。するとすぐに、リビングの床の上は彼のおもちゃでいっぱいになってしまった。佐々木英子は散らかった部屋が嫌いで、叫んだ。「唯月、今すぐ出てきてリビングを片付けなさい。陽君がおもちゃを散らかして、部屋中がおもちゃだらけよ」佐々木唯月はキッチンの入り口まで来て、リビングの状況を確認して言った。「陽におもちゃで遊ばせておいてください。後で片づけるから」そしてまたキッチンに戻って料理を作り始めた。陽はまさによく動き回る年頃で、おもちゃで遊んだら、また他の物に興味を持って遊び始める。どうせリビングはめちゃくちゃになってしまうのだ。佐々木英子は眉間にしわを寄せて、キッチンの入り口までやって来ると、ドアに寄りかかって唯月に尋ねた「唯月、あんたさっき妹に何を持たせたの?あんなに大きな袋、うちの俊介が買ったものを持ち出すんじゃないよ。俊介は外で働いてあんなに疲れているの。それも全部この家庭のためなのよ。あんたの妹は今結婚して自分の家庭を持っているでしょ。バカな真似はしないのよ、自分の家庭を顧みずに妹ばかりによくしないで」佐々木唯月は後ろを振り返り彼女を睨みつけて冷たい表情で言った。「うちの唯花は私の助けなんか必要ないわ。どっかの誰かさんみたいに、自分たち夫婦のお金は惜しんで、弟の金を使うようなことはしません。美味しい物が食べたい時に自分のお金は使わずにわざわざ弟の家に行って食べるような真似もしませんよ」「あんたね!」逆に憎まれ口を叩かれて、佐々木英子は卒倒するほど激怒した。暫くの間佐々木唯月を物凄い剣幕で睨みつけて、佐々木英子は唯月に背を向けてキッチンから出て行った。弟が帰って来たら、弟に部屋をしっかり調べさせて何かなくなっていないか確認させよう。もし、何かがなくなっていたら、唯月が妹にあげたということだ。母親と姉が来たのを知って、佐々木俊介は仕事が終わると直接帰宅した。彼が家に入ると、散らかったリビングが目に飛び込んできた。そしてすぐに口を大きく開けて、喉が裂けるほど大きな声で叫んだ。「唯月、リビングがどうなってるか見てみろよ。片付けも知らないのか。陽のおもちゃが部屋中に転がってんぞ。お前、毎日一日中家の中にいて何やってんだ?何もやってねえじゃねえか」佐々木唯月はお椀を持って出て来た。先

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第315話

    それを聞いて、佐々木英子は唯月に長い説教をしようとしたが、母親がこっそりと彼女の服を引っ張ってそれを止めたので、彼女は仕方なくその怒りの火を消した。内海唯花は姉を手伝ってベビーカーを押して家の中に入ってきた。さっき佐々木英子が姉にも六千円出して海鮮を買うべきだという話を聞いて、内海唯花は怒りで思わず笑ってしまった。今までこんな頭がおかしな人間を見たことはない。「お母さん」佐々木英子は姉妹が家に入ってから、小さい声で母親に言った。「なんで私に文句言わせてくれないのよ!弟の金で食べて、弟の家に住んで、弟の金を浪費してんのよ。うちらがご飯を食べに来るのに俊介の家族だからってはっきり線を引きやがったのよ」「あんたの弟は今唯月と割り勘にしてるでしょ。私たちは俊介の家族よ。ここにご飯を食べに来て、唯月があんなふうに分けるのも、その割り勘制の理にかなってるわ。あんたが彼女に怒って文句なんか言ったら、誰があんたの子供たちの送り迎えやらご飯を作ってくれるってんだい?」佐々木英子は今日ここへ来た重要な目的を思い出して、怒りを鎮めた。しかし、それでもぶつぶつと言っていた。弟には妻がいるのにいないのと同じだと思っていた。佐々木唯月は義母と義姉のことを全く気にかけていないと思ったのだった。「唯月、高校生たちはもうすぐ下校時間だから、急いで店に戻って店番したほうがいいんじゃないの?お姉ちゃんの手伝いはしなくていいわよ」佐々木唯月は妹に早く戻るように催促した。「お姉ちゃん、私ちょっと心配だわ」「心配しないで。お姉ちゃんは二度とあいつらに我慢したりしないから。店に戻って仕事して。もし何かあったら、あなたに電話するから」内海唯花はやはりここから離れたくなかった。「あなたよく用事があって、いつも明凛ちゃんに店番させてたら、あなた達がいくら仲良しの親友だからって、いつもいつもはだめでしょ。早く店に戻って、仕事してちょうだい」「明凛は理解してくれるよ。彼女こそ私にお姉ちゃんの手伝いさせるように言ったんだから。店のことは心配しないでって」「あの子が気にしないからって、いつもこんなことしちゃだめよ。本当によくないわ。ほら、早く帰って。お姉ちゃん一人でどうにかできるから。大丈夫よ。あいつらが私をいじめようってんなら、私は遠慮せずに包丁を持って街中を

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第314話

    両親が佐々木英子の子供の世話をし、送り迎えしてくれている。唯月は誰も手伝ってくれる人がおらず自分一人で子供の世話をしているから、ずっと家で専業主婦をするしかなかったのだ。それで稼ぎはなく彼ら一家にこっぴどくいじめられてきた。母と娘はまたかなり待って、佐々木唯月はようやく息子を連れて帰ってきた。母子の後ろには内海唯花も一緒について来ていた。内海唯花の手にはスーパーで買ってきた魚介類の袋が下がっていた。佐々木家の母と娘は唯月が帰って来たのを見ると、すぐに怒鳴ろうとしたが、後ろに内海唯花がついて来ているのを見て、それを呑み込んでしまった。先日の家庭内暴力事件の後、佐々木家の母と娘は内海唯花に話しに行ったことがある。しかし、結果は唯花に言いくるめられて慌てて逃げるように帰ってきた。内海唯花とはあまり関わりたくなかった。「陽ちゃん」佐々木母はすぐにニコニコ笑って彼らのもとに行くと、ベビーカーの中から佐々木陽を抱き上げた。「陽ちゃん、おばあちゃんとっても会いたかったわ」佐々木母は孫を抱きながら両頬にキスの嵐を浴びせた。「おばあたん」陽は何度もキスをされた後、小さな手で祖母にキスされたところを拭きながら、祖母を呼んだ。佐々木英子は陽の顔を軽くつねながら笑って言った。「暫くの間会ってなかったら、陽君のお顔はぷくぷくしてきたわね。触った感じとても気持ちいいわ。うちの子みたいじゃないわね。あの子は痩せてるからなぁ」佐々木陽は手をあげて伯母が彼をつねる手を叩き払った。伯母の彼をつねるその手が痛かったからだ。佐々木唯月が何か言う前に佐々木母は娘に言った。「子供の目の前で太ってるなんて言ったらだめでしょう。陽ちゃんは太ってないわ。これくらいがちょうどいいの」佐々木母は外孫のほうが太っていると思っていた。「陽ちゃんの叔母さんも来たのね」佐々木母は今やっと内海唯花に気づいたふりをして、礼儀正しく唯花に挨拶をした。内海唯花は淡々とうんと一言返事をした。「お姉さんと陽ちゃんを送って来たんです」彼女はあの海鮮の入った袋を佐々木英子に手渡した。「これ、あなたが食べたいっていう魚介類です」佐々木英子は毎日なかなか良い生活を送っていた。両親が世話をしてくれているし、美味しい物が食べたいなら、いつでも食べられるのに、わざわざ弟の家に来

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第313話

    二回も早く帰るように佐々木唯月に催促しても、失敗した英子は腹を立てて電話を切った後、母親に言った。「お母さん、唯月は妹の店にいて、陽君が寝てるから起きてから帰るって。それでうちらに鍵を取りに来いってさ」佐々木家の母親は眉間にしわを寄せ、不機嫌そうに言った。「陽ちゃんが寝てるなら、唯月が抱っこして連れて帰って来ればいいじゃないの。唯花には車もあるし、車で二人を連れて来てくれればそんなに時間はかからないじゃないか」息子の嫁はわざと自分と娘を家の前で待たせるつもりだと思った。「わざとでしょ。わざと私たち二人をここで待たせる気なんだよ」佐々木英子も弟の嫁はそのつもりなのだと思っていた。「前、お母さんがわざと鍵を忘れて行ったことがあったじゃない。彼女が不在だったら、電話すれば唯月はすぐに帰ってきてドアを開けていたわ。今回みたいに私らを長時間待たせることなんかなかった。お母さん、俊介たち夫婦が大喧嘩してから唯月の態度がガラッと変わったと思うわ」佐々木母もそれに同意した。「確かにね」佐々木英子は怒って言った。「唯月はこの間うちの俊介をあんな姿にさせて、ずっと俊介を迎えに来るのを拒んでいたわ。だから、私たちで俊介を説得して帰らせることになった。私たちは全部陽君のためだったのよ。もし陽君のためじゃなければ、俊介に言ってあんな女追い出してやったのに。家は俊介のものよ。本気でうちらを怒らせたら、俊介にあいつを追い出させましょ!」昔の佐々木唯月は夫の顔を立てるために、義姉である佐々木英子には寛容だった。いつも英子から責められ、けちをつけられても許していたのだ。今佐々木英子は更に唯月のことが気に食わなくなり、弟にすぐにでも唯月を追い出してもらいたかった。離婚しても、彼女の弟みたいに条件が良ければ成瀬莉奈のように若くてきれいなお嬢さんを嫁として迎えることができるのだ。佐々木唯月が俊介と離婚したら、一体誰があんな女と結婚しようと思う?再婚したかったら、70や80過ぎのじいさんしか見つからないだろう。「この話は私の前でだけ話しなさい。俊介には言わないのよ」佐々木母は心の中では唯月に不満を持っていたが、孫のためにもやはり息子と嫁の家庭を壊したくなかったので、娘に忠告しておいた。娘が息子の前でまた嫁の悪口を言うのを止めたかったのだ。「お母さん、わ

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第312話

    「妹はあんたに何か貸しでも作ってたかしら?あんたの母親と姉が食べたいんでしょ、なんで妹がお金を出す必要があるのよ?俊介、結婚してから三年余り、私は仕事をしてないからお金を稼いでない。だけど、家庭のためにたくさん犠牲にしてきたのよ。私が裏であなたを支えてなかったら、あんたは安心して仕事ができた?今のあんたがいるのは一体誰のおかげだと思ってるの?お金をくれないってんなら、私だって買いに行かないわ。それから、送金するなら私の労働費もプラスしてもらわないとね。あんたが割り勘にしたいって言ってきたのよ。あれはあんたの母親と姉で私があの人たちに食事を作ってやる義務なんかないわ。私に料理をしてあの人たちに食べさせろっていうなら、お給料をもらわないとね。三年以上夫婦としてやってきたんだから、それを考慮して四千円で手をうってあげるわ」佐々木俊介は電話の中で怒鳴りつけた。「金の浪費と食べることしかできないやつがよく言うぜ。今の自分のデブさを見てみろよ。てめえが家庭のために何を犠牲にしたってんだ?俺には全く見えないんだがな。俺が今仕事で成功しているのは俺自身が努力した結果だ。てめえのおかげなんてこれっぽっちも思っていないからな。なにが給料だよ?俺の母さんはお前の義母だろ?どこの嫁が義母に飯を作るのに給料を要求するってんだ?そんなこと他所で言ってみ?世間様から批判されるぞ」「お金をくれないなら、私は何もしません」佐々木唯月はそう言うと電話を切ってしまった。佐々木俊介は妻に電話を切られてしまって、怒りで携帯を床に叩きつけたい衝動に駆られた。しかし、その携帯を買ってからまだそんなに経っていないのを思い出してその衝動を抑えた。その携帯は成瀬莉奈とお揃いで買ったものだ。一括で同じ携帯を二台買い、一つは自分に、もう片方は成瀬莉奈にあげたのだ。だからその携帯を壊すのは惜しい。「このクソデブ女、陽が幼稚園に上がったら見てろよ!俺と離婚したら、お前みたいなブスを誰がもらってくれるんだ?くたばっちまえ!」佐々木俊介はオフィスで佐々木唯月をしばらく罵り続け、結局は唯月に一万円送金し彼女に海鮮を買いに行かせることにした。しかし、唯月が買い物をした後、レシートを残しておくように言った。夜彼が家に帰ってからそれを確認するためだ。「あいつ、お姉ちゃんに帰ってご飯を作れって?

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第311話

    佐々木唯月は強く下唇を噛みしめ、泣かないように堪えていた。彼女はもう佐々木俊介に泣かされた。だから、もう二度と彼のために涙を流すことはしたくなかった。彼女がどれだけ泣いても、彼がもう気にしないなら、流した涙で自分の目を腫らすような辛い思いをする必要があるのか?「大丈夫よ」佐々木唯月は証拠をまた封筒の中に戻し、気丈に平気なふりをして言った。「お姉ちゃんの気持ちはだいぶ落ち着いているわ。今彼の裏切りを知ったわけではないのだし」「唯花」佐々木唯月は封筒を妹に渡した。「お姉ちゃんの代わりにこの証拠をしっかり保管しておいてちょうだい。私が家に持って帰って、彼に見つかったら財産を私から奪われないように他所に移してしまうかもしれない。そうなると私が不利になるわ」「わかった」内海唯花は封筒を受け取った。佐々木唯月は冷静に言った。「あなたに言われた通り、まずは何もしらないふりをしておく。仕事が安定したら、離婚を切り出すわ。私がもらう権利のあるものは絶対に奪い取ってみせる。あんな奴の好きにはさせないんだから!」結婚した後、彼女は仕事を辞めてしまったが、彼女だって家庭のために多くのことをやってきたのだ。結婚してから佐々木俊介の稼ぎは夫婦二人の共通の財産である。彼の貯金の半分を奪い取って、発狂させてやる!それから、現在彼らが住んでいるあの家のリフォーム代は彼女が全部出したのだ。佐々木俊介にはそのお金も返してもらわなければならない。「お姉ちゃん、応援してるからね!」内海唯花は姉の手を握りしめた。「お姉ちゃん、私がいるんだから、思いっきりやってちょうだい!」「唯花」佐々木唯月は妹を抱きしめた。彼女が15歳の時に両親が亡くなり、それから姉妹二人で支え合って、一緒に手を取り合い今日までやってきた。だから、彼女は佐々木俊介というあのゲス男には負けたりしない。「プルプルプル……」佐々木唯月の携帯が突然鳴り響いた。妹から離れて、携帯の着信表示を見てみると佐々木俊介からだった。少し躊躇って、彼女は電話に出た。「唯月、今どこにいるんだ?」佐々木俊介は開口一番、彼女に詰問してきた。「一日中家にいないでさ、母さんと姉さんが来たらしいんだ、家に入れないって言ってるぞ」佐々木唯月は冷ややかな声で言った。「お義母さ

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第310話

    結城理仁は椅子に少し座ってから、会社に戻ろうとした。内海唯花が食器を洗い終わりキッチンから出てくると、彼が立ち上がり出ていこうとしていたので、彼に続いて外に出て行った。彼は一言もしゃべらず、車から大きな封筒を取り、振り返って内海唯花に手渡し声を低くして言った。「この中に入ってる」内海唯花は佐々木俊介の不倫の証拠を受け取り、もう一度お礼を言おうとした。その時彼のあの黒く深い瞳と目が合い、内海唯花は周りを見渡した。しかし、通りには人がいたので、やろうとしていたことを諦めた。「車の運転気をつけてね。会社にちゃんと着いたら私に連絡して教えてね」結城理仁は唇をきつく結び、低い声で返事をした。彼は車に乗ると、再び彼女をじいっと深く見つめて、それからエンジンをかけ運転して店を離れた。内海唯花はその場に立ったまま、遠ざかる彼の車を見つめ、彼らの間に少し変化があるのを感じた。彼が自分を見つめる瞳に愛が芽生えているような気がした。もしかしたら、彼女は気持ちをセーブせず、もう一度思い切って一歩踏み出し、愛を求めてもいいのかもしれない。半年の契約はまだ終わっていないのだから、まだまだチャンスはある。そう考えながら、内海唯花は携帯を取り出し結城理仁にLINEを送って彼に伝えた。「さっきキスしたかったけど、人がいたから遠慮しちゃったわ」メッセージを送った後、彼女は結城理仁の返事は待たなかった。少ししてから、内海唯花は大きな封筒を持って店に入っていった。佐々木陽は母親の懐でぐっすり寝ていた。牧野明凛は二匹の猫を抱っこして遊んでいて、内海唯花が入って来るのを見て尋ねた。「旦那さんは仕事に行った?」「うん、仕事の時間になるからね。彼は仕事がすごく忙しいから夜はよく深夜にやっと帰ってくるの」内海唯花も二匹の子猫を触った。結城理仁が彼女にラグドールを二匹プレゼントしてくれた。彼女に対して実際とてもよくしてくれている。犬もとても可愛い。ペットを飼うことになったので、彼女は後でネットショップで餌を買うことにした。「お姉ちゃん、あそこにソファベッドがあるから陽ちゃんをそこで寝かせたらいいよ。ずっと抱っこしてると疲れるでしょ」内海唯花は姉のもとへ行き、甥を抱き上げて大きな封筒を姉に渡して言った。「これ、理仁さんが友達に頼んで集め

コードをスキャンしてアプリで読む
DMCA.com Protection Status